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人間と世界と正しいことの間にあるもの [小説]

51CFKFXYC0L__SS500_.jpg「東電OL殺人事件」というノンフィクションを読んで衝撃を受けている今日この頃。正しい人間として生きていきたいと願うならば、知っていなければならないことがたくさん含まれている本だと思える。ただ、知ってしまうと、正しいことは鮮明になるんだけど、個人はどうやって戦えばいいのかが、全く分からなくなってしまう本なんだとも思う。佐藤は今混乱している。どこから手を付けたらいいのか分からないのだ。

一番気になったのは「権力」とは?という問題だった。

いろんなことが含まれているし、男女の差もあると思うのだが、佐藤は男として、被害者への思いよりも、無罪の人間に有罪判決を突きつけてしまう権力の構造に、無性に興味を引かれている。どうしてこういうことが起きてしまうのか?その判断を担う人間は、何を基準に生きているのか?なんだかそういう正義を標榜している世界には、普通に人々が信じている正義は当てはまらないんじゃないか?

一生世界平和なんて来ないのかもと思ってしまえる内容だ。だけど、実は既に知っている世界なのかもしれないとも思える。そういう本当に大事なところは知りたくないと思って生きてきている人間もたくさんいるだろう。佐藤はどうしても知りたいと思ってしまうタイプの人間だね。

だからかなあ。凄く混乱している。佐藤は人を信じたいと思って生きているんだけど、世界は逆なんだと思えるんだよ。ようするに世界は正しくないんだよ。信じてはいけないんだよ。

混乱しちゃうよ。信じちゃいけないの?表面に見えているものは嘘なの?

読めば読むほど人生を見つめ返してしまう。そんな本だよ。


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