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野球の練習でも、お芝居の稽古でも「本番でやらないことはやらない」という覚悟がいいプレイヤーを作る。 [日々感じること]

「本番でやらないことはやらない」。お芝居でも野球でもなんでもいい。高みを目指すならば圧倒的に必要な思い。そこまでを目指さないのであれば苦しいだけだけどね。

本番でやらないことって何だ?

ざっくりし過ぎて焦点が広がってしまうよね。でも、言葉にするとそうなる。何のためにやっているのか分からないことはやらないってことなんだけど。やらないことって言うからぼやけるのか?本番と練習は変わらないってことなんだけど、どう話せば伝わるのか?

佐藤がどこでそれを感じたのかを書いてみればいいのかな?

まずは野球の話。小学2年の時。佐藤は野球を始めました。何も考えずに野球をしていましたが、毎日練習していても何が上手くなっているんだか分からない日々が小学校~高校まで続きます。自信を持ってプレイすることが出来ない。これ分かりますかねえ?こんなこと書くと当時のメンバーに怒られそうですけど敢えて書きますが、そうだったんだあーーーって気が付いたのは、30歳を過ぎてからなのね。あの時はそうだったんだなあってね。

きっと佐藤は子供のころからそこそこ野球がやれてたんです。だから一応レギュラーに選ばれたりする訳です。それはそれで嬉しかったんですもちろん。だけど、だからといって俺は上手いんだ!とか、上達してるぜ!!という思いにはならないんですね。年数を重ねるにしたがって、どうしたら俺は上手くなるんだ!!上手いって何だ!!俺より上手い奴いるぞ!!挙句の果てには、野球ってなんだ?ってね、ずっとそんなこと思ってたなあ。「そんな思いの奴の補欠だったのか俺は!!」と怒るチームメイトもいるでしょう。すみません。

正直高校野球は苦しかったなあ。正解が分からなくて。上手くなってる手応えがないのにレギュラーでいることが苦しかった。もともと持っているものだけでやってればいいだけなら練習いらないんですよ。苦しかったなあーー。だって練習しても練習しても上手くなっていく手応えがないんですから。

さて、それでも佐藤は、そんな思いのまま大学野球に進みます。これが不思議なところなんですが、都大会2回戦レベルの男が、大学野球を選択するというミラクル。魔が差したというかね。魔が差して大学野球は選ばないとは思いますが、そこが佐藤のネジが外れている部分なんですかね?(後にソニーを辞めるのと同じ脳みそであることは間違いなさそうですが)そのときは、せっかく六大学に入ったんだから、大学野球を極めてみよう!と思うわけです。野球への憧れというか、ずっとプロを目指してやってきたからね。心のどこかで上手くなりたい。本当の野球を知りたいという思いもあったと思う。野球したかったんだなあ俺。

でもね。大学で野球をやって本当によかった。いや本当によかったです。すぐですよ。1年の夏前には何を上手くなればいいのかが分かりましたから。一つ上に後にジャイアンツに入る仁志敏久さんという先輩がいて。練習中、キャッチャーからのスローイングがセカンドベースの手前でワンバウンドしてきた時に、佐藤は上手にショートバウンドで捕ったんですけど、「それじゃアウトにならねーだろ!」って怒られたんです。そのときですよ。全てが分かりました。

アウトにすればいいのかあーーーー!!!!!
そのために練習してたんだあーーーー!!!!

ってことですよ。そりゃそうだけどなかなか気付けない。どう?分かる?

ベースの手前でどれだけ上手に捕っても何にもならないということですよ。アウトにしたければ、ベース上でハーフバウンドで捕る。どっちみちセーフになるのであれば、ハーフバウンドで勝負した方がアウトになる確率は上がる。万が一逸らしても、センターがちゃんとカバーしてくれていれば大丈夫。おっちょこちょいなランナーなら、その瞬間に離塁が大きくなったりして、またアウトを取れる可能性が出てくる。凄い広がりだ!!!

何に気が付いたのかというと。

それまでの佐藤は簡単に言えば監督に怒られないようにやっていただけだったということに気が付いたんです。それだけじゃなく、もっといい形で捕ろうとか、グラブ捌きをもっと華麗にやらなければとか、そんなことばかり考えながら練習していたんですね。上手くなることはかっこよくプレイすることと思っていたんだと思います。アウトにならないようなプレイをして喜んでいたんだろうなあ。でも違った。アウトに出来たことで喜べばいいのよ。だって、やらなければいけなかったのは、アウトにすることなんだから。なんでもいいからアウトにすることだけを考えていればよかったんです。形なんて汚くてもいい。兎に角アウトにすることに命を掛けていればよかったということに突然気が付いた瞬間でした。考えてみると、アウトにしたいからいい形で捕球したいし握りかえも早くしたいし、守備範囲も広げたい訳よね。

「それじゃアウトにならねーだろ!」

それからの佐藤の野球は、アウトに出来る打球を一つでも多く増やすことに収斂していきます。アウトにするために走り、投げ、転がり、叫ぶ。見たことのある打球ならこれ知ってる!と思いながらアウトにし、見たことのない打球なら、こんな打球みたことないぜ!記憶しなければ!と引き出しを増やし、必要な距離を投げられるように筋トレをして、逆にアウトになりたくないから足を早くする。もうねえ、何を練習していてもアウトに繋がることに喜びを感じながら野球に取り組めているんです。その思いは44歳を過ぎた今も変わっていません。凄いことだ。一つのきっかけだけですよ。だからそれ以降は、野球をやる以外にも、サッカーを見ていても、バレーを見ていても、新聞や雑誌、小説を読んでいても、アウトにするヒントを探している自分がいますよ。これがどういうことか分かりますか?

一生楽しめる。

ということですよ。高校までの、ポテンシャルだけで勝負する野球しかしらなかったとしたら、練習の重要性も分からないし、年とともに衰えていく自分が嫌になって野球をしなくなっていたかもしれません。それがなんと。

一生楽しめる野球。

になったということの幸せよ。プロの選手が毎日毎日ちゃんと練習する意味も分かるというものですよ。年を取ろうがなんだろうが、アウトにしたいという思いだけで、野球が楽しめるんだから、そりゃ幸せですよ。一つアウトを取ったらそれだけで本当に幸せです。誰かがアウトを取っても嬉しい。アウトを取っている姿は美しいんです。しかもそうなると練習も本番もないんですね。とにかく打球が飛んだらアウトにしよう!!それだけ。野球ってそれだけです。俺の野球は幸せ野球です。

全ての練習は本番のためになるしかない。本番も練習も変わらない。

ということですね。これ以上練習しても本番でミスが出たら大変だから、新しいことはやるのはよそう。ってことにならない。そうではなくて、新しいアウトの取り方が見つかれば、本番中でもやっていいというのが、佐藤の見つけた野球です。そもそもミスらない人間はいないしね。もしも対戦相手のプレーを見てあんなアウトの取り方があるんだーーーって思ったら取り入れればいい。うちはそういうプレイはしませんからっていうのがない。なぜなら、目的がアウトだから。アウトのバリエーションはあればあるだけ有利なんだから。そして、本当にアウトのことばかり考えてグランドにいると、緊張もしなくなるんです。

ここもポイント。

緊張はへっぽこの自分を見せたくないという自分自身の思いだから、一つもチームのためにならないんですね。そういえば、かっこよくとか、華麗にということを目的に練習していた時は、本当にミスしてたなあーー。逆にアウト、アウトって思ってグランドに集中するとミスも減ったし、そもそも緊張する暇がないんですね。打球に集中できるから。面白いよなあーーー。それからはミスしても、ミスするということは、捕れない打球があるということだから、もっと練習するしかないなっていうシンプルな思いに繋がっていったなあ。

野球の話ばかりしてますが、そうでした。佐藤の幸せの話は置いておいて。お芝居の話。お芝居も同じです。お芝居にとってのアウトアウトっていうものは何だろう?と佐藤は思ったんです。

答えは簡単。「感情」と「キャラクター」でした。

お芝居で言うと、「お前プロだろ!」っていう言葉をもらって「俺はプロなんだな」って思うようになったとか、「それ面白いの?」っていう言葉を頂いて「面白いには答えがあるのか」という思いになり、最終的には「それじゃアウトにならねーだろ!」と同じようなきっかけがちゃんとありました。

以前参加したお芝居に、自称音楽関係者という役があり(なんじゃその役は)、ダブルキャストでしたが佐藤は衣装も派手なアッパーな業界人を作り、片や逆班の俳優さんは地味目な業界人を作り上げるというね。同じ役なのに全く違う役が出来上がったことがあって。まずどうしてそういう役作りなったかという理由はちゃんとありまして、共演者とのバランスですね。佐藤のチームは見た目でも誰かが派手さを出さないとシーンとして面白みが出ないだろうなという佐藤の判断で、逆班はその逆で、他に面白3人組がいたのでそこを浮き上がらせるために地味な作りに、やっぱりその俳優さんの判断で作りました。キャラ設定は基本俳優に任されていると思うよ。見せた者勝ちだよね。不採用になっても引き出しは増えるということだからね。下手だと思われたら嫌だから試さないっていうのは、自分勝手なことですよ。作品のために必要だと思ったら、下手でも何でも作り上げるしかないんだから。それが俳優の仕事なんだから。ま、それは置いておいて、ということで、同じ役なのに、全く違うキャラクターが生まれたんですね。そこからが面白い。何が面白いかというと、肝になるシーンでの感情がお互いまるっきり同じなんですね。本当にびっくりしましたよ。ここです。佐藤はこの時に確信したんです。

シーンごとに表現されるべき感情はストーリーの中に書かれている。その感情はキャラクターによって左右されなくていい。あとは、キャラクターごとに(俳優ごとに)その感情をどう表現すればいいのかを考えればいいということ。

佐藤はよく逆班を偵察に行って、自分の感情は合っているのかの確認に行きます。もちろんこの時も確認のために逆班の俳優さんの使っている感情を見に行きました。そうしたら見事に同じで。ここで怒って、嫉妬して、許して、悲しむ。みたいなね。「だよねだよね」と出さなきゃいけない感情の確認が出来たのです。もちろん稽古も本番も自信を持って演じましたよ。

ということで、俳優は台本をもらったらとにかく、感情のチェックをしようと。そこさえあっていれば、ストーリー上困ることは何もない。そして稽古期間一ヶ月を使って何をするのか?台詞を覚える、動きを覚えるっていうのは、練習のための練習だから、必要な人が自分の時間でやればいいわけだからそういう作業は除くと、稽古期間に俳優がやる作業は、物語の中の感情を抜き出して、この感情であっているのか?、キャラクターとの整合性は取れているのか?、他の役との関係性に破綻はないか?のチェックをしていればいい。キャラクターは他の役とのバランスもあるしね。その間に演出家は演出という足枷をどんどん嵌めて来る。ここに立て、この間尺で動け、喋れ、笑え、みんなで揃えろ等演出は演出の武器をこれでもかを投下して来る。ただ足枷は多ければ多いほど、同時に感情も決まって来るから、実は役者にとっては大きなヒントであることも多い。稽古だろうが、本番だろうが、感情表現にだけ気持ちを割いていればいい。

じゃあ、滑舌や発声は?ダンスはやらなくていいの?

ってなる?ここも野球と繋がるところだよね。遠くに投げられる方がアウトになる確率が上がるっていうのと同じように、どんなキャラクターでも演じられるように、どんなトリッキーなキャラクターでも演じられるように、滑舌よく喋れたほうがいいし、キレよく動けた方がいい。それというのも、あらゆる感情表現するために持っていた方がいいというスキルなだけ。滑舌がいいからいい役者って訳ではないでしょ?

とにかく俳優は感情だけを考えていればいい。どの感情をどの大きさで使えばいいのかを考えてくれる俳優は信用できる(野球で言うアウトを取ることだけに集中しているプレイヤー)。目立ちたい。面白くしたい。だけを考える俳優は信用できない(野球で言う華麗さを求めるプレイヤー)。感情表現が素晴らしいから面白い。感情表現が巧みだから目立つ。若手はそういう俳優を目指して欲しいなあー。

ということで、「感情」と「キャラクター」どっちも面白い方がいいとは思いますが、まずは感情を的確に表現できる俳優になることを目標にする。その上で、自分の容姿や声を使って感情表現できるキャラクターを増やして行く。

これだけでも一生ゴールはなさそうでしょ?

新しい感情表現に出会ったときの感動。面白いキャラクターを思いついた時の感動。そのうち「感情」表現は当たり前だから、もらった台本の中でどんな「キャラクター」で演じればいいかなあーーってそんなことばかりを考えるようになるよね。そしてどんな作品を見ても、俺にはあのキャラやれるかなあとか、俺の容姿でやるにはどんなキャラクターの方がいいかなあーーとか。そんな風に作品と向き合うようになるよね。それが上達するということ。

ね、一生楽しめるでしょ?

どうですか?いい練習してますか?ただやらされていませんか?どんな思いを持ってもいいけれど、きっとやっていくうちに最終的にこの思いに辿り着くはずです。試してみてください。佐藤は色々反論を試みましたが、これ以上シンプルな思いは見つけられませんでした。

とにかく、練習して上達しよう。日々の高まりを感じよう。練習して何を上手くなればいいのかが分かった時、野球でも、芝居でも、他のこと何でもかんでも、信用できるプレイヤーに近付くのかな。年取って腕がないっていうのは辛いよ。

「現状で満足しているプレイヤーは信用できない。 日々上達することを目指すことがプレイヤーとして生きると決めた人間の使命である。」

練習して何が上手くなっているのかが分からないと思っていた若いときの自分に本当に教えてあげたい。
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